ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「いや……っ」
どれだけ手を伸ばしても、つかめるのは空気ばかり。
颯の姿は、あっという間に見えなくなってしまった。
「や……っ、颯!颯ぇぇぇぇぇっ!!」
仁菜の悲鳴が響くと、カフカはそれを聞き、嬉しそうに笑った。
「はははは!一人死んだ!」
カフカの狂ったような笑い声が響く。
仁菜がそちらをにらみつけると、突然大きな音がして、カフカのわき腹から赤い花が待った。
「ちっ!」
シリウスの舌打ちが響く。
彼の持っていた銃から、白い煙が出ていた。
「くっ……、最後の弾が残ってたか……」
カフカは傷を押さえ、シリウスをにらみつける。
「ラス様!シリウス!」
「ニーナ!ハヤテは……!?」
そこへ、やっと全ての魔獣の息を止めたアレクとカミーユが駆け寄ってきた。
「お前は……許さない!!」
立ち上がったラスが石からレイピアを取り出すと、カフカは後退する。
「……時間切れだ。
今度会った時には、本気で皆殺しにしてやるからな」
「待て……っ!」
ラスが攻撃するより早く、カフカは黒い霧になって消えてしまった。