ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・ヤンキー、実家に帰る
……ああ、焦りすぎた。
颯はぼんやりとそう思う。
泣かせたいわけじゃなかったのに、どうしてああなってしまったんだろう。
いくらラスと仁菜のキス現場を目撃してしまったからと言って、あんなことをしたら、いやがられるに決まっていたのに。
(ごめん……)
全部、壊してしまった。
幼いころのキレイで無垢な思い出も、
そのころの仁菜が自分に寄せてくれた信頼も、
異世界に行ってから、少しづつ仁菜が許してくれた心も、
たもたなければならなかった距離も、全部。
そこまでして、自分は何がしたかったんだろう?
颯は自問自答する。
(ただ、俺は……)
お前が好きだったんだよ、ニーナ。