ヤンキー君と異世界に行く。【完】
バイクの主は、しっかりかぶっていたヘルメットを外し、地上に着陸した。
現れた人物の髪は黒髪にピンクのメッシュが入っており、額には日の丸がついた鉢巻。
今時真っ赤な特攻服のセットアップに、胸にはさらしを巻き、腕には腕章。
完全な、田舎の暴走族。
完全な、田舎のヤンキーだった。
「テメエが迷惑なコールはやめろって言ったからじゃねえか。
ト○ロなら子供も怖がらねえだろ?むしろ喜ぶだろ?」
「……本気で言ってるの?」
「あぁ?ああ、○トロは古すぎるか!
ポ○ョの方がいいのか!」
「どっちもいらない」
ばっさり切り落とすと、ヤンキーは「そんな、まさか!」という顔で固まってしまった。
こいつ、アホだ。
仁菜はため息をつく。
なんだか、全てがバカバカしく思えてきた。
目の前にいるヤンキーは、実は仁菜の幼なじみ。
ひとつ年上の、櫻井颯(サクライ・ハヤテ)。
一生懸命怖い顔をしているけど、実は黙っていればイケメンの部類。
仁菜は、颯の完全な二重まぶたと高い鼻が、うらやましかった。
それとは対照に、自分は奥二重だし、鼻は低め。
地味な顔が、コンプレックス。
だから余計、颯がイケメンだと認めたくなかった。