ヤンキー君と異世界に行く。【完】
よしよしと、颯に抱きついている母親がその頭をなでる。
「川を……?」
頭がずきずきと痛みだす。
「2週間くらい前、お前は行方不明になったんだよ。
バイクだけ川辺にあってさ。
でも昨日、その川辺に、お前は倒れてたんだ。
アニメのコスプレみたいな格好してさ」
「おかーさん、もうあんたは太平洋に流されて、アメリカにでもいっちゃったんだと思ってたわー」
記憶が、少しずつ甦る。
父の言う2週間くらい前とは、仁菜を川辺で見つけたあの日のことだろう。
あの日颯はたまたまバイクであのあたりを走っていて、ただならぬ様子の仁菜を見つけた。
思いつめた様子で水面をにらむ仁菜の気を散らせようと、颯はトト○コールで近づき、話しかけたのだった。
仁菜が有名な私立校の受験に失敗したという噂は、自営業をやっている自宅に来た客のひとりが母親に話していたのを聞いて、知っていた。
「ニーナは……」
あの日の水のにおいを思い出す。
彼女は思いとどまってくれた。
颯のワキ汗は半端なかったけど、なんとか仁菜が家に帰ると言ってくれて、安堵した。
そのあと……二人は、川に落ちてしまったのだ。