ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(もしかして、あれは全部……夢だったのか?)
やけにリアルな夢を見ていた気がする。
変な世界に行ってしまって、いきなり勇者にされた。
仁菜はそこの男どもにちやほやされていて、ついにあのイケメン王子にキスをされてしまったのだ。
「仁菜ちゃんのカバンも一緒にあったのよね。
でも、仁菜ちゃんはまだ見つかっていないの。
あんたも、川に落ちただろうとは警察に言われていたんだけど。
まさか失踪地点と同じ場所に帰ってくるとはねー」
母が、残念そうに言う。
彼女は仁菜を小さなころから知っていて、心配しているらしい。
「お前、仁菜ちゃんと何かあったのか?
あとで警察が来るそうだぞ。
お前が仁菜ちゃんを事件に巻き込んだんじゃないかって、世間じゃそう言われてる」
「はぁ……!?」
「心外だよなあ。
俺が『颯は昔から仁菜ちゃんが好きだから、そんなことありえない』って言ったら、警察は『じゃあ息子さんはストーカーだったんじゃないですか』とか言うんだぜー」
「……!!」
父の発言に、颯は真っ赤になった。
オヤジよ、なぜそんなことをわざわざ警察に言う。
そしてなぜ知っている。
ストーカー扱いされたことも心外だけど、父親が自分の気持ちを見抜いていたことが、妙に恥ずかしかった。