ヤンキー君と異世界に行く。【完】
──がちゃり。
ドアが開く音に、背中がびくりと震えたのがわかった。
颯がゆっくりと振り返ると、そこには仁菜の母親の姿が。
彼女は颯をにらみつけ、唇をかみしめていた。
仁菜を起こさないように二人で庭に出ると、颯は仁菜の母に平手打ちを食らわされた。
『怖い子!
私がいないうちに家に入って、何をしてるの?』
釈明のしようもなかった。
現場を見られてしまった颯は、犯罪者の気分でうつむいた。
『まだ小学生のあの子に、何をしようとしたのよ!?』
仁菜の母は、颯の制服をつかむ。
その手は怒りで震えていた。
『ごめんなさい』
颯は素直に謝る。
小学生どうしでキスしているやつなんか、何人も知っているけれど、親の気持ちになってみればそれは歓迎するべきことじゃない。
それはなんとなくわかっていた。
『もう二度と、仁菜に近づかないで』
『でも……』
俺は、仁菜が好きなんです。
それはもう、真剣に。
まだ子供だけど、子供なりに、仁菜を大事にするから……。
そんな気持ちを話す余裕も、颯には与えられない。
ただ、汚いものを見る目で、母親がたたみかける。