ヤンキー君と異世界に行く。【完】


その一言で、颯はかっと頭に血が上るのを感じた。


自分がののしられるのはいい。


だけど、家族をバカにされるのは許せない。


『っざけんなよ……』


今にもつかみかかってしまいそうな自分を、なんとか抑える。


『わかったよ、もうニーナには近づかない。

俺はあんたの思うような人間には、絶対なれないから』


自分は頭も悪いし、これといった技能もない。


適当な工業高校に行って、家業を継ぐのが当然だと、颯は思っていた。


颯がどうがんばっても実家は整備工場だし、頭が悪いから大した大学にも行けないだろうし、セレブになりたいとも思わない。


『あんたの言ってることが絶対正しいって言うんなら、もう俺は、あいつに近づかない。

でも、約束してくれよ。証明してくれよ。

ニーナは絶対、あんたの手の中で、幸せになれるんだって』


胸が熱かった。


何もできない子供の自分が悔しくて、颯の目から涙が溢れる。


仁菜は、いつもさみしそうにしていた。


特に何もない庭で、いつもぼんやりと空を眺めていた。


だから、救いたいと思った。


笑ってほしかったから、思いつくままバカなことを話し続けた。



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