ヤンキー君と異世界に行く。【完】
『もっと、そばにいてやってください。
あいつのこと、見てやってください。
あいつ、小さいころからずっと寂しかったから、他人に対して心をなかなか開けないんだ。
そんなんじゃ、いくらお金があったって、地位があったって、あいつは幸せになれない』
仁菜の母親の顔が、不快を全開にして、何かを言いかける。
でも、颯はぼろぼろと涙を流しながら、訴えた。
『俺は……っ。
あいつが好きだけど、ニーナが大好きだけど、今日で絶交するから……!
だから絶対、あいつを幸せにしてやってください!』
そう言い放って、仁菜が寝ている二階の部屋の窓を、一度だけ仰ぎ見た。
魔女に幽閉された、いとしいお姫様。
俺に王子の資格があったなら、いますぐ連れ去っていけるのに。
現実は厳しくて、子供は親の庇護の下でしか生きられなくて。
仁菜の母親が何か言い返したみたいだけど、颯はそれを最後まで聞かず、門を乱暴に開けて飛び出した。