ヤンキー君と異世界に行く。【完】


……今思えば、『絶交』だなんて、ガキすぎるにもほどがあると、颯は思う。


あれから颯は、仁菜の家には決して近づかなかった。


近所でばったり会っても、無視した。


そのうち、親の工場に入り浸っていた『煉獄』の連中と親しくなり、めでたくヤンキーになった颯。


それまで颯を見ては傷ついた顔をしていた仁菜は、わかりやすい軽蔑の目で颯を見るようになった。


それは当然さみしかったけど、どこかで安心した。


毛嫌いされれば、突き放しても、もう仁菜が傷つくことはない。


そして、最初は緊張したが、入ってみればヤンキーの世界なんか、とてもちっぽけなものだった。


自分と同じような、とくに目的もなく、これといって飛びぬけたものもなく、だのにあふれる若い情熱をどこに持っていけばいいのかわからない人間の、吹き溜まりだった。


安心してそこに浸るうち、気づけば総長になっていた。


そしてこの春、仁菜の高校受験にまで失敗したという噂を、聞いたのである。


話が違うじゃないか、と颯は思った。


自分が身を引いてまで守ったのは、いったいなんだったんだろう。


自分がいなければ、仁菜は幸せになれるはずだったんじゃないのか。



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