ヤンキー君と異世界に行く。【完】
7.ヤンキー大活躍?
・選ぶ未来
仁菜はもう何度目になるかわからないくらい、地の裂け目をのぞきこんだ。
そこから、ふわりと銀色の物体が浮かんでくる。
颯と乗ったことのある、異世界バイクだ。
今乗っているのはアレクとカミーユで、仁菜の頭上を越え、砂漠に着地する。
すがるように見つめるが、二人は力なくうなだれるばかりだった。
颯がいなくなって、2日が経った。
仁菜たち一行はすぐ近くに寄せた、砂漠の中の軍艦に身を寄せている。
どうせ魔族にはこちらが近づいていることはばれているし、前の戦闘で傷ついた者もいるので、とカミーユは言っ
ていた。
3人はとぼとぼと軍艦の中に戻っていく。
集合場所となっている操縦室に入ると……。
「はい、シリウス。あーん」
「…………」
ラスが上機嫌で、怪我をしているシリウスの世話を焼いていた。
向かい合って座り、携帯食をシリウスの唇に寄せている。
シリウスは眉をひそめながらも、決して嫌だとは言わなかった。
ぱくりとそれを食べると、ラスの白い指先に、シリウスの赤い舌先が触れる。
「おいし?」
にこにこと笑って首をかしげるラスが、まるで新妻みたいに見える。
シリウスは黙ってもぐもぐしていたが、ほのかに頬が赤かった。
いつもならここで激萌えしてしまう仁菜だが、今はそんな余裕はまったくない。