ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(なによう!自分だけ幸せそうにしてさっ!)
仁菜はいたたまれず、くるりと背を向けて操縦室を出ていく。
「あのう……お二人とも……」
「少しは仁菜の気持ちも考えていただきたいのですが……」
カミーユとアレクが言うと、ラスは初めてそちらに気づいたような顔をした。
「あっ、おかえり!ハヤテは見つかった?」
彼らは、一日に何度も地の裂け目に行っては、シリウスが城から脱走してくる際に乗ってきたバイクで、境界の川のほとりにまで降りて探索していた。
しかしみつかったのは伝説の剣だけで、颯の姿は、まったく見えない。
「いえ……服の切れ端さえ……」
「そっか……」
報告を聞いたラスは、しゅんとうなだれた。