ヤンキー君と異世界に行く。【完】
そんなことを思っても、どうにもならないことはわかっている。
颯がどうなったのかは、誰にもわからない。
境界の川に落ちて、元の世界に帰ったのかもしれないし、別のどこかへ流されたかもしれない。
楔の聖剣が抜けてしまっている今、境界の川はとても不安定になっているらしいと、仁菜は聞いた。
元の世界に帰ったのなら、まだいい。
もともと颯は、仁菜の浅はかな行動の巻き添えを食ってこっちに来てしまったのだし、
どこか違う場所に流されてしまったとか、
魔族に見つかって食べられちゃったんじゃないかとか、
普通に溺死しちゃったんじゃないかとか、
そう考えるよりは、ずっと楽だった。
(颯……どこにいるの?)
ピンク色の石を付けたままの胸が、きゅうと痛む。
思い出すのは、あの強引なキスの記憶。
好きだとストレートに言ってくれた、いつの間にか低くなっていた声。
思い出せば、自然に涙が溢れる。
(あたしのことなんか、かばう必要なかったのに)
涙とともに溢れるのは、後悔ばかり。
自分がでしゃばらなければ、颯があんなことにはならなかったかもしれない。
そう思うたび、仁菜は自分も崖から飛び降りたくなるのだった。