ヤンキー君と異世界に行く。【完】
浴室から出て着替えると、部屋のドアがノックされた。
どうぞと返事をすると、仲間たちがぞろぞろと入ってくる。
「あの……ニーナ、ハヤテのことは残念だったね」
ラスにいきなりそう切り出され、仁菜はムッとする。
(自分はいいよね、シリウスさんが戻ってきたんだもん)
とは言えないけど、仁菜は返事をせず、ラスをにらんだ。
「これだけ探しても見つからないということは、颯は元の世界に帰ってしまったのかもしれませんね」
カミーユが言う。
(これだけって、まだ2日しか探してないのに)
「……ニーナ、単刀直入に言おう。
そろそろ、この先のことを決めようと思う」
シリウスが言うと、仁菜の胸がどきりと嫌な音を立てる。
「今は、ランドミルからの追手は、精霊族が足止めしてくれている」
シリウスが言うには、自分が城から脱走してくる際、すでにランドミルの兵は王妃の命令で動き出していたという。
その時のどさくさにまぎれ、シリウスは脱走に成功。
精霊族に連絡を取り、急いでランドミル軍を足止めしてもらえるように頼んだ。
セードリク王は、谷で約束した通り、ラスに力を貸すことを承諾してくれた。