ヤンキー君と異世界に行く。【完】
仁菜は仲間たちの顔を順に見る。
アレク。カミーユ。ラス。シリウス。
みんなそれぞれ魅力のある、素敵な人たちだと仁菜は思っている。
つらい過去を乗り越えた、心の強い、優しい人たちだと。
だからこそ、胸が痛む。
「そんなの……あたしが、ランドミルのためにいけにえになるってことじゃないですか」
花嫁になるといえば聞こえはいいけど、つまりは目的のために、愛のない結婚をするということじゃないか。
自分は結局、道具扱いされるだけの存在なのか。
みんなのことが好きだからこそ、つらい。
「そう思われてもしょうがないけど……俺たちはみんな、ニーナが好きだよ」
ラスの言葉に、全員がうなずく。
「俺は、ニーナがいなければ、過去を消化することができなかった。
感謝している。
可能な限り、お前を大切にしたいと思っている」
アレクが低い声でつぶやく。
「僕は、ニーナといるとほっとします。
きみはひだまりのようで、いつも僕を優しい気持ちにさせてくれる。
僕も、きみにとってそういう存在でありたいと、そう思っています」
ふわりと優しく微笑むカミーユ。