ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「俺は前に言ったとおりだけど、ニーナが好きだよ。
一生懸命に人の痛みに寄り添おうとがんばってくれるニーナが好き。大好きだよ」
真剣な瞳をするラスから、仁菜は目をそらす。
「でも……ラスは結局、シリウスさんが一番なんでしょ」
おもわず反論してしまった言葉に、ラスは目をまん丸くした。
「もしかして、やきもち?」
「そ、そんなんじゃないけど」
「俺はたしかにシリウスは大好きだよ。
でも女の子で好きなのは、ニーナだけだよ」
「じゃあラスが女の子だったら?
あたしじゃなくて、シリウスさんを選ぶんでしょ?」
「それは……そんなもしもの話をしたって、しょうがないじゃない」
それはそうだけど。
仁菜は頬を膨らませて、うつむいてしまう。
結局ラスは、国のために子供を産める自分を選んでいるだけのような気がしてしまう。
アレクやカミーユの言葉も本当に嬉しいけど、どこか疑ってしまう自分がいる。
(ああ、あたしったら、今すごーく嫌な女の子になってる……)
自分に価値なんかないと思っていた。
「運命の花嫁」なんて、自分で望んだのではない不可価値がついてしまったせいで、よけいにわけがわからなくなる。