ヤンキー君と異世界に行く。【完】


「優しいキミにこんなことを言う僕たちは、卑怯です。

それは重々、承知しています」


「けれど、俺たちにも守らなければならないものがある。

それはわかってほしい」


カミーユとアレクの言葉に、弱弱しくうなずく。


仁菜にはもうわかっている。


自分の選択が、この星の人たちの運命を左右するのだと。


それは自分だけの問題じゃなくて、もっと大勢の命にかかわること。


迷っている時間はない。


(なのに、どうして?)


颯が、いない。


彼じゃなければ、他の誰を選ぶことも、できない。


「ニーナ」


シリウスの腕が離れる。


ふわりと、仁菜の目の前で春風のようにラスの金髪が揺れた。


彼は優しく仁菜の肩に手を添え、その瞳をのぞきこむ。


「他のことは考えないでいいよ。

ニーナは自分がどうしたいか、考えて。

俺が誰にも、文句は言わせない」


ラスはアクアマリンの瞳で、力強く仁菜の瞳を射抜く。


そして済んだ声で、言った。




「ニーナの未来は、ニーナが決めていいんだよ」





< 338 / 429 >

この作品をシェア

pagetop