ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「優しいキミにこんなことを言う僕たちは、卑怯です。
それは重々、承知しています」
「けれど、俺たちにも守らなければならないものがある。
それはわかってほしい」
カミーユとアレクの言葉に、弱弱しくうなずく。
仁菜にはもうわかっている。
自分の選択が、この星の人たちの運命を左右するのだと。
それは自分だけの問題じゃなくて、もっと大勢の命にかかわること。
迷っている時間はない。
(なのに、どうして?)
颯が、いない。
彼じゃなければ、他の誰を選ぶことも、できない。
「ニーナ」
シリウスの腕が離れる。
ふわりと、仁菜の目の前で春風のようにラスの金髪が揺れた。
彼は優しく仁菜の肩に手を添え、その瞳をのぞきこむ。
「他のことは考えないでいいよ。
ニーナは自分がどうしたいか、考えて。
俺が誰にも、文句は言わせない」
ラスはアクアマリンの瞳で、力強く仁菜の瞳を射抜く。
そして済んだ声で、言った。
「ニーナの未来は、ニーナが決めていいんだよ」