ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・決断
「ラス様、よかったのですか?
あのように言っては、ニーナがますます迷ってしまうのでは?」
少し一人で考えさせてほしいと言われ、部屋から出た一行。
翌日になっても仁菜は姿を現さない。
シリウスの言葉に、ラスは笑う。
「だって、みんなだって同じ思いでしょ?
ニーナに誰かを選んでもらえたら、ランドミルは助かる。
そしたら確かに嬉しいけど、そのためにニーナの心が泣いたら、意味ないもん」
ラスは、くるりと仲間の方を振り返る。
「ニーナはずっと、俺たちに流されるまま、一緒に来てくれた。
だから最後くらいは、ニーナに決めさせてあげたいと思ったんだ」
真剣な瞳のラスに、反論するものはいなかった。
自分の故郷を守りたい。
だけど、そのために大事な人を泣かせてもいいのだろうか?
答えは、否だ。
その思いは、全員一緒だった。
「では……ニーナの結論が出るまで、俺はもう一度、川のほとりに行ってみる」
アレクが言う。
そうだね、と言いかけたラスの前を、ドタドタと何かが大きな音を立てて走り抜けた。
「ちょっと、どうしたの?」
ラスが呼び止めると、その何かが足をとめて振り向く。
それはクマっぽい、砂漠の民の長老の孫(弟)だった。