ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「きっとあやつらは、ランドミルを拠点に、人間界を滅ぼすつもりじゃ……」
砂漠の民の長老がつぶやく。
カフカが『人間は皆殺し』とことあるごとに言っていたのを、ラスは思い出した。
「終わりだ……!何もかも……!」
砂漠の民たちは天上の光景にひれ伏し、悲鳴をあげた。
「……どうなさいますか、ラス様」
シリウスが落ち着いた声音でラスにたずねる。
「ランドミルに、帰りますか。
燃料を補充すれば、この軍艦は魔族を撃退するのに役立つでしょう」
「あんな魔族の軍団に歯向かおうだなんて、無謀です!
王子、私たちだけでも遠くの地に逃げましょう」
長老の孫(兄)がラスにすがりつくように言う。
「いくら逃げたって、無駄ですよ。
いつか見つかります。
食糧にだって限界があるし、今生き延びても、いずれ人間は滅びるでしょう」
カミーユが静かに言うと、砂漠の民たちは余計にうなだれてしまった。
震えて、泣きだす者もいる。
ラスはその光景を、じっと見つめていた。
「ラス様、ご決断を」
シリウスがうながす。
「俺たちは、最後まであなたについていくつもりです」
アレクが低い声で言うと、仲間たちはうなずいた。