ヤンキー君と異世界に行く。【完】
しん、とその場が静まり返る。
最初に沈黙を破ったのは、ラスだった。
「……そっか。異世界からきたんだもの、ニーナにだって、勇者の資格があるはず。
よし、俺はニーナの言う通りにしよーっと」
にこりと笑って、仁菜の剣を持つ手を、そっと自らの手で包み込む。
「俺がいるよ。
重たい荷物は、一緒に持とうね」
その春の陽光のような微笑みを向けられると、仁菜はホッとする。
そして、その言葉に胸が熱くなった。
重たい荷物は、一緒に持とう。
全てを一人で抱え込む理由は、どこにもないのだから。
「ラス様がそうおっしゃるなら、俺もついていくまでだ」
「ええ、そうですね。僕も同意です」
アレクとカミーユが言い、ラスの手に自らの手を重ねた。
「……私も異論はない。
だがニーナ、この事態だ。
どうするべきだと思う?」
仁菜は空を見上げる。
すでに魔族たちは、遠くの空へ消えていこうとしていた。
ここに来るまでにクマっぽい弟に会って、事情は知っている。
「……部隊をわけましょう。
砂漠の民たちと、アレクさん、そしてカミーユさん。
ランドミルへ向かってください。
ここから軍艦を飛ばしていっても時間がかかるでしょうけど、あそこには精霊族がいてくれる。
なんとかこらえてくれると信じましょう」