ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「わあ、希少です!
シリウスの黒くない笑顔!」
「本当だ。カミーユ、写真」
「はい!」
カミーユとアレクのやりとりに、ラスが笑った。
シリウスはきっとそちらをにらんでいたけど、仁菜も笑う。
ラスが言ったとおり、誰も仁菜に文句は言わなかった。
仁菜が目指すのは全部を守りきることだけど、そんなに都合よくいくわけがない。
それは、全員がわかっていた。
それでも、自分と仲間を信じることが、唯一の希望につながる。
仲間たちはお互いの顔を見合わせ、手を合わせた。
「あたしを信じてください。
あたしは、あなたたちを信じています」
信じるしかない。
ここまで来て信じられるのは、神の予言でも、伝説の勇者でもない。
ただ困難を乗り越えてそばにいる仲間たちと、自分だけなのだから。
(前に進むんだ)
傷ついても、うまくいかなくても、走り続けるしかないのだから。