ヤンキー君と異世界に行く。【完】
心の中で思い出すのは、『喧嘩上等』の刺繍。
ダサい、赤色の特攻服。
へんなピンクのメッシュ。
おバカのくせに自信満々な、きらきらした瞳。
小さなときから変わらない笑顔。
本当は優しくて、いつも自分のことをかばって、守ってくれた。
『大切なことは、目に見えないこともあるわ』
エルミナの言葉を、この2日で何度も思い出した。
本当にバカだったのは自分のほうだと、仁菜は思う。
ヤンキーだから、ダサイから、おバカだから、裏切られたから。
そんな理由で、颯のことをまっすぐ見ようとしなかった。
異世界に来て最高に不安だった。
そんな自分の手をいつもひいてくれたのは、颯だったのに。
ウザいくらい正直で、素直に気持ちを表してくれていたのに。
見ないふりをしていた。気づかないふりをしていた。
また失うのが、怖かったから。
いつか……また、会えることがあったら。
そのときは……。