ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「は、ハヤテ!」
ラスの声がして、魔界の木がザワザワと揺れた。
「お前……!」
カフカが木の上で驚いた顔をしていた。
「生きていたのか、ハヤテ!」
すぐ近くにいたシリウスににっと笑って、ヤンキーはいつもと変わらない調子で、仁菜を助け起こしながら言う。
それはもちろん、仁菜の幼なじみの颯だった。
「俺にもよくわかんねぇけど、あのとき境界の川に落ちたらしいわ。
ちょっと元の世界に戻ったんだ」
「え……待って。
じゃあ、元の世界に戻れたのに、またわざわざこっちに来たの?」
ラスが枝の上から降りてくる。
「ん?なんかおかしいか?」
おかしいことだらけだ。
元の世界に戻れたなら、わざわざ危険な異世界に帰ってくることないのに。
それに、白いジャージはずぶ濡れで、よく見ればボクサーパンツの色が透けているし、
背中にはブルドッグが骨をくわえている意味不明なイラストがプリントされているし、
足下は猫ちゃん健康サンダルだし。
はっきり言って、おかしすぎる。
超ダサい。
だけど。
「颯……!」
涙が溢れる。
それを隠すように、仁菜は颯の胸に飛び込んだ。