ヤンキー君と異世界に行く。【完】
敵がひとまずいなくなり、ほっと息をつく一同。
ラスは自分の上着を脱ぎ、颯に投げ渡した。
「あーあ、恋敵が帰ってきちゃった」
そんなセリフで、仁菜は我に帰る。
颯からぱっと離れてうつむくと、クスクスと笑われた。
「ニーナ、大丈夫だって。
ニーナが誰も選ばなかった時点で、俺たちみんな、わかったから」
「な、なにが?」
「ニーナはハヤテのことが……」
「わっ、わーわーわー!」
ラスの言葉の先を予想し、仁菜は慌てた。
「あ?なんだよ」
「な、なんでもないから。
ラス、今はそんな場合じゃないから」
「ふふ……そうだね」
ラスはどこか寂しそうに、でもいたずらっ子のように笑った。
(み、見抜かれてるみたい……)
とうの本人はまったく気づいていないみたいだけど、ラスは仁菜の気持ちに気づいたようだった。
「それはそうと、お前髪の毛どうした?」
濡れたジャージをぬぎ、ラスの上着を着た颯がたずねる。
(あんたこそどうしたのよ、そのかっこう)
ラスの上等な服は颯には少し小さいようで、胸のボタンを開けている。
つまり、上半身裸にラスの上着、下はジャージのままで履物は猫ちゃんサンダル。
もうおかしいとか笑えるってレベルじゃなくて、ただただダサい。
冷静に見ると百年の恋も冷めそうな仁菜だったけど、「大切なものは目にみえないんだ、うん」と自分を納得させ、今まであったことを颯に説明した。