ヤンキー君と異世界に行く。【完】


敵がひとまずいなくなり、ほっと息をつく一同。


ラスは自分の上着を脱ぎ、颯に投げ渡した。


「あーあ、恋敵が帰ってきちゃった」


そんなセリフで、仁菜は我に帰る。


颯からぱっと離れてうつむくと、クスクスと笑われた。


「ニーナ、大丈夫だって。

ニーナが誰も選ばなかった時点で、俺たちみんな、わかったから」

「な、なにが?」

「ニーナはハヤテのことが……」

「わっ、わーわーわー!」


ラスの言葉の先を予想し、仁菜は慌てた。


「あ?なんだよ」

「な、なんでもないから。
ラス、今はそんな場合じゃないから」

「ふふ……そうだね」


ラスはどこか寂しそうに、でもいたずらっ子のように笑った。


(み、見抜かれてるみたい……)


とうの本人はまったく気づいていないみたいだけど、ラスは仁菜の気持ちに気づいたようだった。


「それはそうと、お前髪の毛どうした?」


濡れたジャージをぬぎ、ラスの上着を着た颯がたずねる。


(あんたこそどうしたのよ、そのかっこう)


ラスの上等な服は颯には少し小さいようで、胸のボタンを開けている。


つまり、上半身裸にラスの上着、下はジャージのままで履物は猫ちゃんサンダル。


もうおかしいとか笑えるってレベルじゃなくて、ただただダサい。


冷静に見ると百年の恋も冷めそうな仁菜だったけど、「大切なものは目にみえないんだ、うん」と自分を納得させ、今まであったことを颯に説明した。


< 355 / 429 >

この作品をシェア

pagetop