ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「へえ、そんなことがあって、そんなざっくばらんな髪形になったわけか」
じっと颯に見つめられ、仁菜はうつむく。
一応鏡を見て切ったのだけど、やっぱりプロじゃないし、後ろなんかどうなっているかわからない。
ただ、女の子っぽさをなくして、勇者っぽくなればいいと思って切った。
まさか、颯がこんなに早く帰ってくるとは。
(髪、切ったりするんじゃなかった……)
後悔する仁菜に、颯はひとこと。
「別に、あとでそろえればいいんじゃね?
俺様はショート好きだぜ?
ロングだとさ、幽霊みたいじゃん」
ぐい、と仁菜のあごを持ち上げ、にっと笑う颯。
不意にキスされた記憶を思い出し、仁菜は真っ赤になった。
「……シリウス、俺はお前がいてくれればそれでいいよ」
「ええ、私はいつでもラス様のおそばにいます。
いつかきっとニーナ以上の花嫁をお探ししますので、今はご辛抱を」
ラスとシリウスの、冗談だか本気だかわからないやりとりに、余計にいたたまれなくなる。
「あーあのっ!
そういえば颯っ、どうやって元の世界からこっちに来たの?」
聞くと、颯はやっとあごから指を離してくれた。