ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ど、ど、どうするんですか、魔王の城なんて……怖すぎます~!」
がくがくと震える、完全にビビってしまった仁菜の肩を、颯が優しく抱く。
「そーだよなあ、ラスボスの城に行くには、もうちょっと経験値がいるよなあ。
レベル上げしねーと、ちょっときついんじゃね?」
「颯、ゲームじゃないんだから!」
「ニーナ、やっぱりハヤテにツッコんでるときが一番生き生きしてるね♪」
おバカな颯に、のんきなラス。
仁菜はがっくりと全身から力が抜けていくような気がした。
(もう知らない。
ここまで来ちゃったんだもん、やるしかないよね)
まだ姿を見せない魔王のことは想像しないでおこうと、仁菜は決めた。
敵のほとんどがランドミルに向かっている、今しかチャンスはないのだから。
「ようし、行きましょう!」
気合を入れて立ち上がろうとした仁菜の服のすそを、シリウスがひっぱる。
そのおかげで、仁菜はすてんとその場に転んでしまった。
「なんなんですか!」
せっかくがんばろうって思ったのに。
「ニーナ、私に作戦がある。
一度聞いてくれ」
「さ、作戦?」
聞き返すと、シリウスはこくりとうなずいた。