ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ここでまた、二手に分かれよう。
城の真正面から、私が城の中へ行こう。
ラス様とハヤテ、ニーナは裏側からこっそりと侵入し、風の樹を目指す」
「ちょっと待ってください。
それじゃ、シリウスさんがおとりになるってことですか?」
シリウスは「そうだ」とうなずく。
たしかに全員で真正面から突っ込むより、成功の可能性は高くなるかもしれないけど。
「みんなで隠れて行ったって、たぶん見つかっちゃうしね。
戦力を分散させるのは悪い方法じゃないかも」
「でも、シリウスさんひとりをおとりにするなんて……!」
淡々と言うラスのそでをつかむと、彼はキョトンと首をかしげた。
「え?ひとりにするわけないじゃん。
もちろん俺が一緒に行くよ?」
ラスはそれが当然であるかのように言う。
「シリウス、これは命令だからね。
もう二度と、俺のそばを離れることは許さない。
俺のために、自分を犠牲にすることもね」
にこりと笑いかけられたシリウスは、しぶしぶといった様子でうなずいた。
(でもなんとなく、まんざらでもなさそう……)
「ニーナ、こいつらやっぱりデキてたのか?ホモなのか?」
「ち、違うと思うけど……」
仁菜は直球で聞いてくる颯のあしらいに、少し困ってしまった。
ラスとシリウスには聞こえなかったらしく、二人そろってキョトンとしていた。