ヤンキー君と異世界に行く。【完】
というわけで……。
こっそりと城に少しずつ近づき、城門の影に隠れた一行。
「じゃあ、俺たちが先に行くから。
ハヤテたちは隠れて、城の裏側に回って」
ラスがひそひそ声で言うと、颯と仁菜は黙ってうなずいた。
(うわぁぁ、試験の時より緊張するよ……)
どくんどくんと高鳴る胸をおさえようと、深呼吸する。
しかし、なかなかうまくいかず、指先が震えてきた。
そんな仁菜の手を、颯がそっとにぎる。
「颯……」
「大丈夫だって。俺がいる」
大きな颯の手が、自分の手をすっぽり包んでいる。
自信満々に言う言葉より、伝わってくる体温が仁菜を安心させた。
「もう二度と、離さないから」
それは……この戦いの中でっていう意味?
それとも、この先、この戦いが終わっても、ずっとって意味?
そんなことを聞いている暇はなかった。
「行くぞ!」
シリウスの号令と共に、銃弾が城門の近くにいた見張りの魔族を撃ち落とす。
「なんだ?」
「門の外に、誰かいるのか!?」
中から魔族のしわがれたような声がして、ぎいいと重い城門が開いた。
「……誰だ、お前は……」
そこに現れた美しい生き物に、魔族は一瞬視線を奪われる。
陽光を反射し、きらめく金髪。
白磁のような肌。
瞳はアクアマリンで、形の良い唇が、うっすらと微笑みをたたえている。