ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「やあ」
全身宝石のような少年を前に、魔族はたじろぐ。
魔族と言えば黒髪に灰色の目を持った者ばかりで、こんなに色鮮やかな生き物をはじめて見たのだろう。
そしてその見た目につりあわない威圧感を体中から放ちながら、彼はささやいた。
「お願いがあるんだ。
風の樹の実をひとつ……ゆずってくれないかな?」
魔族がハッとした瞬間だった。
少年の後ろから青い影が飛び出し、銃口を向けた。
「て……敵襲!敵襲ーっ!」
叫ぶ魔族の口に、弾丸が放たれた。
空に響く銃声と、血しぶきが上がる音に、城内にいた魔族たちが彼らの方を向く。
少年……ラスはレイピアを構え、叫んだ。
「俺はランドミルの王子、ラス!
魔王に拝謁を願いたい!」
もちろん、そんな申し出が通るはずもない。
「そんなことできるわけないだろ!」
するどい爪を光らせ、ラスに襲いかかる魔族たち。
その一体の頭が、突然吹き飛んだ。
「……ラス様には、指一本触れさせはせぬ」
シリウスの手の中の拳銃が、白く細い煙を吐いていた。
魔族たちはその眼光に一瞬ひるんだが、すぐに牙をむき、二人に襲いかかってきた。
門の中は、たちまち大混乱と化す。