ヤンキー君と異世界に行く。【完】
ラスとシリウスが戦い始めたのを横目で見ながら、颯と仁菜は城の裏側へ急ぐ。
「ラス……」
「あいつ、目立つもんな。
おとりの才能があるわ」
「颯!なんてこと言うの!」
「俺は忘れてねーからな。
あいつがお前にキスしたのを!」
手をつないだまま、超絶変なかっこうの颯と、仁菜は走る。
「ま、渡す気はさらさらねえけどな」
颯はさらりと言うと、裏側の入り口を見つけ、いったん物陰に隠れる。
仁菜はそれにならい、ぴたりと颯にくっついた。
すると。
「……ニーナ」
すぐ近くで声がして、仁菜は颯の顔を見上げる。
「ちょっと事情があって離れたけど……俺はずっと、お前のことが好きだった」
真剣な表情に、仁菜の胸が高鳴る。
完璧な二重の瞳が、真っ直ぐに仁菜を見つめていた。
「覚悟しろよ。
お前がどんなに嫌だっつっても、俺は勝手にお前を手に入れるからな。
どんなに泣かれたって、引きずってでも、元の世界に帰るからな」
「颯……」
「そんで、俺がお前を幸せにする!」
颯は勝手に話を終わらせると、一人で飛び出ていく。
黒い石から楔の聖剣を取り出したと思うと、こちらにきづいたばかりのみはりを、一体斬り捨てた。