ヤンキー君と異世界に行く。【完】


途中で、何体かの魔族に出会う。


しかし仁菜たちは幅の狭い階段を昇っているため、包囲されるということはなかった。


上から下から迫る敵を、颯が楔の聖剣で斬りつける。


仁菜も伝説の剣を取り出してはみたものの、やっぱり重くて扱えない。


「誰かを傷つけるっていうのは、向いてないみたいだな」


颯は苦笑して、敵を一手に引き受ける。


仁菜は精霊の盾で敵の攻撃から自分たちを守ることに専念した。


魔族は盾にはね飛ばされると、砂漠の民たちのように失神する。


そんなこんなで、足が痛くなって震えても、仁菜たちは階段を昇り続けた。


「ラスたち、大丈夫かな?」

「大丈夫だろ。
あいつらが元気に敵を引きつけてくれているから、城の中がこれだけ手薄なんだろ」

「そっか、そうだね」


息も切れ切れで、胸が痛い。


喉はカラカラで、ヒザもガクガク。


いつまでこの階段が続くんだろうと思った仁菜の前で、突然颯が立ち止まった。


「颯?」

「ニーナ、階段が……」


前方をのぞいてみると、階段が終っていた。


広い踊り場があり、その奥にはいかにもラスボスがいそうな、重厚な扉がある。


「……あれっぽいよな?」

「あれっぽいね……」


たぶんこの先が城中庭園だと、仁菜は思った。


どこからか、緑や土の香りが漂ってくるからだ。




< 366 / 429 >

この作品をシェア

pagetop