ヤンキー君と異世界に行く。【完】
この扉のむこうに、風の樹があるのだろう。
けれど、二人の足はそこからなかなか動かなかった。
「……なあ、すげえ嫌な予感するんだけど」
「うん……」
扉からは、思いっきり近づいちゃいけないオーラがむんむんしている。
颯は顔をしかめ、自分の背中をさすった。
「多分……いるな、ロンゲだったあいつ」
「カフカ?」
「ああ。ここまで出てこないと思ったら……」
やっぱり、そんなにあっさりと見逃してくれるわけはなかったか。
仁菜はううんとうなり、壁のあちこちを調べてみるけれど、扉の他に城中庭園までいけそうなものはない。
窓みたいなものもあったが、その外は切り立った崖のごとくで、つかまるものが何もない。
「うーん、正面から突破するしかないか」
「みたいだね」
「考えてても始まらないか!
行ってみよう!」
颯は勝手に自分だけ覚悟を決め、すたすたと扉の方へ歩いていってしまう。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
仁菜は思わず、その上着のすそをつかんだ。
颯が振り向く。
「あ、あの、ね。
すごーく危険じゃない、この先」
生きて帰れるかどうかわからない。
なにせ、相手はあのカフカだ。