ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「だからね、その、今、言っておこうと思うんだけど……」
「?何を?」
「えっと……」
好き。
その一言が、なかなか出てこない。
もしこの先何かがあって、想いを伝えないままどちらかが死んでしまったら、絶対後悔する。
そんなふうに思うのに、顔が熱くなるばかりで、颯の顔さえ、ちゃんと見られなくなってしまった。
「……ゆ、遺言……っていうか……」
「はあ?アホか、お前も俺も死なねーって」
「わ、わかんないじゃない……颯は無事でも、あたしは……」
「……そんなこと考えるな。
俺は遺言なんか聞かねーぞ、絶対」
颯は不機嫌そうな顔になり、ぷいと前を向いてしまう。
(ああ……なんであたしってこうなの……)
相手の気持ちがわかっているんだから、さっさと告白しちゃえばいーじゃん。
他人にはそうアドバイスできるのに、自分ではなかなかできない。
仁菜は恋愛偏差値0の自分を恨んだ。
だけど、ここで勇気を出さなくちゃいけない気がする。
仁菜は深呼吸をし、颯のすそをつかんだまま、その背中に小さくつぶやいた。
「好きだよ、颯」