ヤンキー君と異世界に行く。【完】
ぴくんと、颯の背中が微妙にはねたような気がした。
「……ま、マジで?」
うつむいてしまっているから見えないけれど、どうやら驚いているようだと、仁菜は思う。
とにかくこくりとうなずくと、颯がそっと仁菜の手をとり、すそから離させた。
目の前に、颯の胸板が現れる。
そして、うつむいたままの仁菜の頬に、彼の手がそっと触れた。
「なあ、本当だよな?信じていいんだよな?」
なにそれ。さっきまで自信満々だったくせに。
だけど、嘘じゃないから、やっぱりこくりとうなずく。
「……じゃあ、顔上げてくれよ。
こっち見ろ」
無理です!
ぶんぶんと首を振ると、がしっと両手で頭をつかまれた。
「見ろって!」
ぐい、と力任せに顔を上向かせられる。
おそらくゆでだこになっているだろう自分の顔の目の前に、颯のキレイな流線形の二重の瞳があった。
「そういうことは、目を見て言え。
ほら、もう一回」
「……やだっ」
「なんで?」
「恥ずかしいから……っ!」
そう言うと同時、颯が仁菜の頭を抱き寄せる。
すっぽりとその腕の中におさまってしまった仁菜の頬は、颯の胸にぴったりとくっついてしまった。