ヤンキー君と異世界に行く。【完】


二人は顔を見合わせてうなずくと、扉の方に向き直る。


しっかりと手をつないだまま、空いた腕で扉を押す。


すると、意外に扉はすんなりと開いた。


そこにいたのは、やはり……。


「カフカ……」


カフカは黒い床と太い柱以外何もない部屋の中央で、剣を片手に立っていた。


「……まさか、ここまで来ちまうとはな」


自嘲気味に笑うと、彼は剣を構える。


「手薄だとはいえ、情けないもんだぜ。

あの王子たちにまんまとやられてる」


言われて耳を澄ますと、階下の方でかすかに武器同士がぶつかりあう音や、発砲音がした。


ラスとシリウスが、善戦しているらしい。


「なあ、どうしても戦わなきゃダメか。

俺たち、風の樹の実ってやつをひとつ譲ってもらえれば、それでいいんだ。

それさえ手に入れば、おとなしく帰るから」


颯はまだ剣をかまえず、カフカに説得を試みる。


戦えば不利な相手だと、さすがのおバカでも学習したらしい。


「自分たちから乗り込んできておいて、ずいぶん勝手な言いぐさだな」


そう言われればそうだ。


だけど、できればカフカとは戦いたくない。


ラスやシリウスも、いつまでもつかわからないし。


言葉につまった颯の代わりに、今度は仁菜がカフカに話しかける。





< 371 / 429 >

この作品をシェア

pagetop