ヤンキー君と異世界に行く。【完】
二人は顔を見合わせてうなずくと、扉の方に向き直る。
しっかりと手をつないだまま、空いた腕で扉を押す。
すると、意外に扉はすんなりと開いた。
そこにいたのは、やはり……。
「カフカ……」
カフカは黒い床と太い柱以外何もない部屋の中央で、剣を片手に立っていた。
「……まさか、ここまで来ちまうとはな」
自嘲気味に笑うと、彼は剣を構える。
「手薄だとはいえ、情けないもんだぜ。
あの王子たちにまんまとやられてる」
言われて耳を澄ますと、階下の方でかすかに武器同士がぶつかりあう音や、発砲音がした。
ラスとシリウスが、善戦しているらしい。
「なあ、どうしても戦わなきゃダメか。
俺たち、風の樹の実ってやつをひとつ譲ってもらえれば、それでいいんだ。
それさえ手に入れば、おとなしく帰るから」
颯はまだ剣をかまえず、カフカに説得を試みる。
戦えば不利な相手だと、さすがのおバカでも学習したらしい。
「自分たちから乗り込んできておいて、ずいぶん勝手な言いぐさだな」
そう言われればそうだ。
だけど、できればカフカとは戦いたくない。
ラスやシリウスも、いつまでもつかわからないし。
言葉につまった颯の代わりに、今度は仁菜がカフカに話しかける。