ヤンキー君と異世界に行く。【完】
淡々と言うカフカの灰色の瞳は、どこまでも冷たい。
心の底から人間を憎んでいるように思える。
説得は不可能なのか。
颯も同じことを思ったのか、ゆっくりと楔の聖剣をかまえる。
「そうだ。やればいい。欲しいものがあるなら力ずくで奪ってみろ。
それがお前たち人間の得意技だろう?」
カフカが何か言うたび、胸が重くなっていくのを、仁菜は感じていた。
カフカが言うことはもっともで、自分たちの世界にも通じるところがある。
はたして、自分たちがしようとしていることは正義なのだろうか?
「……お前の言ってることは、難しすぎてわかんねー……」
ぼそりと、颯がつぶやいた。
「人間がバカだって言いたいのはわかった。
あんなぶっ壊れた世界になっちまったのは、たしかに人間の自業自得だろう」
「…………」
カフカは黙って、颯の言うことを聞いている。
「お前たちが何万年もかけて維持してきたものを横取りするってのも、たしかにずるい気がする。
そこまでして人間界を維持する価値があるのかって言われれば、わかんねえ。
でも、だからって、ここであきらめることも、見捨てることも、俺たちはできない」
颯はきっぱりと言った。