ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「……お前らは何を考えているか、顔に出すぎだぜ」
カフカが、颯と仁菜の方を見て、にたりと笑う。
「やれるものならやってみな。
俺を油断させて、上に行ってみろよ!」
言うが早いか、カフカが床を蹴る。
あっという間に颯の目前に迫った彼は、黒い剣を横に凪ぐ。
颯はそれを、聖剣の腹で受けた。
ギイイインと、鋼どうしがぶつかり合う音がする。
「颯!」
今のうちに階段を昇らなければと思うのだけど、颯を見ているはずのカフカを包む空気には、一片のすきもない。
下手に動けば、敵はこちらに斬りかかってくる。
そう感じた仁菜は、じっと彼らの様子を見守ることにした。
いつでも颯を守れるように、胸の石を握りしめる。
(信じるんだ)
颯は、絶対に死なないと言った。
(信じろ、あたし)
この先なにがあっても、俺を信じろ。
颯がそう言ったなら、信じるだけだ。
彼は負けない。
そして自分は、颯の言う通り、隙を見て風の樹に向かうんだ。
きっと、颯も自分を信じているのだから。
もう、目をそらすことはしない。
(颯を信じて、前だけを見ていくんだ)
カフカの剣が、容赦なく颯に襲いかかる。
しかし颯は、伝説の剣を持っていたときよりさらに早く、聖剣を扱い、攻撃を防いだ。