ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ちっ……今も昔も、気に食わない剣だぜ!
そいつは、先代魔王の命を奪いやがった……!」
そういえば、カフカは何百年も生きていると、髪を切られたときに言っていた気がする。
もしかすると、境界の川ができた時の人間と魔族の戦いのとき、当時の人間の王が持っていた聖剣を見たことがあるのだろうか。
そんなことを仁菜が考えているうちに、カフカの周りの空気が、黒くよどんでいく。
それは黒い霧のように見え、彼の体から湯気のように立ち上っていた。
(すごく嫌な空気……怖い……)
一般人の仁菜にもわかるほど、カフカは全身からすさまじい魔力を漂わせる。
「その剣ごと、粉々にしてやる」
そうカフカが言えば、黒い霧に見える魔力が剣に集まっていく。
(あれは、颯が吹き飛ばされたときの……!)
颯もそれを覚えているらしく、ちっと舌打ちをした。
そして、聖剣を自分の体の前に構える。
「粉々になってたまるか!」
颯の声が、部屋中に響く。
すると不思議なことに、聖剣が白い光を放ちだした。
それは優しい光で、まるで小さな星が刀身の周りできらきらと輝いているようだった。
仁菜も石をにぎりしめ、颯の前に精霊の盾を出現させる。
するとカフカはにやりと笑った形の口のまま、怒鳴った。
「そんなもので防げると思うな!」