ヤンキー君と異世界に行く。【完】
──ドオオオオオオ!
カフカの剣から、魔力が黒く巨大な影となって襲いかかる。
(絶対、守るっ!)
仁菜は石に祈る。
精霊の盾に、邪悪な影はいったん押し戻された。
しかし。
「無理だっつってんだろ、小娘!」
カフカが怒鳴ると、影は再度二人を押し流そうと、迫ってくる。
「く……っ!」
仁菜の額から、汗が噴き出した。
なんとか維持しようと思うのだけど、影は精霊の盾を押し倒すように、仁菜の前に立つ颯の目前に迫っていた。
このままでは、二人ともカフカの魔力に飲まれ、吹き飛ばされてしまう。
(文字通り、粉々になっちゃう……!)
仁菜は思わず、両腕を前に突き出す。
盾を、その手で支えようとするように。
すると颯が、剣を構えたまま、叫ぶ。
「俺はこんなところでくたばるわけにはいかないんだよ!」
仁菜がはっと気づいた時には、聖剣が白くまぶしい光を放っていた。
それは盾を通過し、巨大な影に穴を開ける。
(颯、すごい!)
剣の力だか颯自身の力だかわからないけど、とにかくすごい。
珍しく颯を尊敬した仁菜の前で、本人は至極真面目に言った。
「俺はなあ、まだニーナとキスしかしてねえんだからな!
いっぺんもエロいことしないまま、死んでたまるかああああっ!」