ヤンキー君と異世界に行く。【完】
──こてん。
仁菜がずっこけると、精霊の盾が消えてしまった。
その代わりに、颯の剣が輝き、影を打ち消していく。
(え、えろいことって)
そりゃたしかに、仁菜だって高校生だし、人並みにそっちの知識はある。
それに、お互いに「好きだ」となって「付き合う」ことになれば、いつかは、そういうこともするのだろうけど。
颯の思春期パワーが、まさかカフカの強力な攻撃を防げるほどだとは思わなかった。
「ちっ、生意気なガキめ!」
カフカは影を放つのをやめ、再び颯に斬りつける。
「颯!」
颯がそれを受けると、つばぜり合いになる。
ぎりぎりと、お互いの刃を削りあうような音が、仁菜の耳に不快に響いた。
至近距離でにらみあったかと思うと、颯が力任せにカフカの剣をはじく。
離れたと思っても、カフカはすぐに態勢を整え、何度も颯に斬りこんでいく。
すると颯も、同じように真正面から受けてばかりではない。
敵の刃を紙一重でかわし、自分からも斬りこんでいく。
あと少しで首の皮をかすめられると思った刹那、敵はよけて後方へ飛ぶ。
(どうしよう……なかなか決着がつかない)
できれば、颯が勝つのを見届けてから、二人で風の樹のところへ行きたい。
颯のことはもちろん、ランドミルも階下のラスたちのことも、心配だ。
事は一刻を争っている。