ヤンキー君と異世界に行く。【完】


「行け!行っていいんだ、ニーナ!」

「颯……!」

「黙れ小僧!」


カフカがその剣を高く掲げ、振り下ろす。


空間がぐわんぐわんと揺れるような音がして、二つの鋼がぶつかり合った。


そして……。


──パキィィィン……!


「そんな……!」


長いらせん階段の途中、仁菜は完全に止まってしまった。


大きな音を立て、白い欠片が床に投げ出される。


負けたのは、楔の聖剣の方だった。


颯が持っているのは、柄とかろうじて残った、ナイフほどの長さの剣だけ……。


そんな颯に、カフカは容赦なく剣を突き出す。


仁菜は思わず、目をつぶってしまった。


しかし。


「ニーナ、行け……っ」


聞こえてきたのは、まだ生きている颯の声。


目を開けた仁菜が見たのは、なんとカフカの剣を素手で白刃どりした颯の姿だった。


「なに……っ」


カフカが驚いた顔をしている。


けれど颯はそっちではなく、まっすぐに仁菜の方を見ていた。


「ニーナ……。もう、周りのことばっかり気にしなくたっていいんだ。

どうすればいいか、自分で考えて決めていいんだ。

他人の顔色ばっかり、うかがわなくていいんだ」


「颯……」


「お前がそうしたいと思ったら、迷わずにそうすればいいんだ」


< 380 / 429 >

この作品をシェア

pagetop