ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「行け!行っていいんだ、ニーナ!」
「颯……!」
「黙れ小僧!」
カフカがその剣を高く掲げ、振り下ろす。
空間がぐわんぐわんと揺れるような音がして、二つの鋼がぶつかり合った。
そして……。
──パキィィィン……!
「そんな……!」
長いらせん階段の途中、仁菜は完全に止まってしまった。
大きな音を立て、白い欠片が床に投げ出される。
負けたのは、楔の聖剣の方だった。
颯が持っているのは、柄とかろうじて残った、ナイフほどの長さの剣だけ……。
そんな颯に、カフカは容赦なく剣を突き出す。
仁菜は思わず、目をつぶってしまった。
しかし。
「ニーナ、行け……っ」
聞こえてきたのは、まだ生きている颯の声。
目を開けた仁菜が見たのは、なんとカフカの剣を素手で白刃どりした颯の姿だった。
「なに……っ」
カフカが驚いた顔をしている。
けれど颯はそっちではなく、まっすぐに仁菜の方を見ていた。
「ニーナ……。もう、周りのことばっかり気にしなくたっていいんだ。
どうすればいいか、自分で考えて決めていいんだ。
他人の顔色ばっかり、うかがわなくていいんだ」
「颯……」
「お前がそうしたいと思ったら、迷わずにそうすればいいんだ」