ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「えっとね、風の樹の実が落ちるのは、魔王が死んだときなの。
この前落ちたのは、人間との戦いで、お父様がお亡くなりになったときだったの」
注意深く聞いていると、魔王はそんなことを言う。
たしかに、カフカがさっき、人間との戦いで、先の魔王は命を落としたと言っていた。
そのときに風の樹の実は落ちて、今なっている実は、何百年もかけてこの小さな魔王のためになったというわけなのか。
「……とすると、あなた何歳?」
「え、わかんない……」
可愛く見えても、もう何百歳という年齢で、実はものすごい力を持っているのかも。
仁菜が警戒してにらむと、魔王はぷるぷると震え、泣きだしてしまった。
「ほ、ほんとなの。
ウソついてないの……」
信用できない。
この旅、始まってから誤算だらけだった。
きっとこの魔王も、気を許した途端に襲いかかってくるに違いない。
しかし、そう思う仁菜に魔王が襲いかかってくる様子は感じられなかった。
二人が見つめ合っていると、不意に背後で物音がした。
「カフカ……!」
叫んだのは、仁菜ではなく魔王だった。
「魔王様!」
カフカはさっきより少し傷が増えていて、汗だくになっていた。
彼は仁菜を素通りし、魔王に駆け寄る。
呆気にとられていると、階段の方から足音がした。