ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「待てっ、このやろ……おお?」
剣を振り上げたまま後を追ってきた颯。
大きな怪我がなくて、仁菜はほっとする。
「ニーナ、このチビ誰だ?」
どうやら、カフカはしつこい颯を振り切り、こちらに来たらしい。
颯も可愛い魔王を見て、首をかしげる。
「ええと……魔王さんなんだって……」
「へっ?このチビがラスボス?」
予想通り驚いた颯に、カフカが怒鳴る。
「お前ら、頭が高い!
こちらにおわすお方をどなたと心得る!」
畏れ多くも、先の副将軍、水戸光圀公であらせられるぞ~。
仁菜の頭に、一瞬大昔の時代劇のセリフがよみがえった。
「うえ~ん、カフカぁ~」
「あああ、よしよし魔王様、もう大丈夫ですからね」
しかし鬼のような顔をしていたカフカは、魔王に泣きつかれ、まるで母親のように優しくその肩を抱いた。
「おえ、気持ちわる」
猫なで声のカフカは確かに気持ち悪いけど、仁菜はそう言った颯の腕をつついて黙らせた。
「あの……風の樹の実をとってしまうと、その子……いえ、魔王さんが死んでしまうっていうのは、本当なんですか?」
仁菜がカフカに聞くと、彼はかっと目を見開いた。
「魔王様!人間に秘密を話してはならないと、あれほど申し上げましたものを……!」
「う、う……うわあああん、ごめんなさいいいい。
このおねえちゃんが優しそうだったから、つい……うええええ」