ヤンキー君と異世界に行く。【完】
泣きじゃくる魔王に、それをなだめるカフカ。
どうやら話は本当らしい。
「じゃあお前、魔王を守るために、俺たちを退けようとしたのか……」
颯が言うと、カフカが魔王を抱っこして立ち上がる。
「……そうだ。先代が亡くなってから、俺はずっとこのお方のお世話をしてきた。
二人で、ずっとこの樹の実を見守ってきたんだ。
この樹の実が、魔王様の命を守っている。
だから、失うわけにはいかない」
……なんか、誰かさんと誰かさんにそっくりじゃない?
仁菜はラスとシリウスの顔を思い浮かべた。
「境界の川の結界がなくなったときから、人間どもが風の樹の実を奪いに来るのではという懸念はあった。
だから私たちは魔王様を守るため、人間どもを抹殺してやろうと思ったんだ」
そういえば、カフカが一度戦いの中で、ラスの可愛いお願い攻撃にやられそうになったことがあった。
(もしかしてあれは、魔王を思い出したから?)
それにしても、魔族は少し考えることが過激みたいだ。
「おい……どうすんだよ。
いくら俺でも、ガキをいたぶる趣味はねえぞ」
「そんなの、あたしだって……」
途方にくれる颯と仁菜。
するとその場に、もう二つの足音が迫ってきた。
「ハヤテ!ニーナ!生きてるっ?」
「ラス!シリウスさん!」
仁菜たちの前に現れたのは、階下での戦いでボロボロになったラスとシリウスだった。
二人は風の樹を見上げたあと、カフカと魔王の存在に気づく。
「え、あれ?この子だれ?」
魔王を指さしたラスに、仁菜は同じ説明を繰り返さなければならないのだった。