ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「なんだ、ただの俺様の嫌なヤツかと思ってたら、全部魔王くんのためだったのか。
カフカって、意外にいいヤツだったんだね」
一通りの説明を終えると、ラスはほっこりした顔でそう言った。
軽くディスられたカフカは、ぎりぎりと奥歯を噛む。
しかし、魔王を抱っこしているため、戦うことができないでいるみたいだ。
「ラス様、敵に情けは無用です。
ひと思いにかたをつけましょう」
シリウスがラスに耳打ちするのが、近くにいた仁菜にも聞こえた。
「でも……」
「迷っている暇はありません。
彼らは我が国に侵攻している。
砂漠の民にも犠牲者を出しました。
傷を負っているのはお互い様です。
あなたはあなたの国民を守るため、心を鬼にしてもらわねばならぬときもあるのです」
シリウスが上着から拳銃を取り出し、魔王に向ける。
「おい、シリウス……!」
「ラス様もお前たちにもできないのなら、私がやるまでだ」
シリウスの無慈悲なセリフに、魔王はぷるぷると震える。
「魔王様、あなたが本気を出せば、あんな人間ども、簡単に葬ることができます。
さあ、戦うので降りてください。
そして協力してください」
そんなカフカのセリフで、シリウスを止めようとしていた仁菜たちは一気に警戒態勢になった。