ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(やっぱり、本当はものすごい邪悪な力があるんだ……魔王だもんね!)
仁菜の周りで、それぞれが武器を構える。
しかし魔王はカフカの腕にしがみついて懇願した。
「やだよ、やめて……!
ぼくは魔界でのんびり生きていたいだけなのに…っ」
「魔王さん……」
「お姉ちゃんたち、ひどいよ。
カフカのおててを切ったり、髪を切ったりして。
ぼく、カフカになでなでしてもらうのも、カフカの髪のにおいをかぐのも大好きだったのに」
もしかして、髪を切られてカフカがキレていたのは、魔王のお気に入りだからだったのか。
「これ以上カフカを傷つけるなら、ぼくだってガマンしないんだからーっ!」
魔王がさけぶと、その泣き声が超音波となって、仁菜たちに襲いかかる。
「うわぁぁぁん!」
「うっせ!
耳いてえよ!」
「あ、頭が……」
耳をふさいでも、ほんの少しの隙間から魔力が流れ込んでくる。
「ラスーっ!
もうやめてやれよ!
人間の後始末は人間でつけようぜ!
そこの保護者を説得しろーっ!」
颯は剣を捨て、シリウスを指差す。
「シリウスさん、お願いします!
シリウスさんなら……ううん、ラスもアレクさんも、カミーユさんも、みんな魔王さんの気持ちがわかるはずじゃないですか!」
誰だって、大切な人を守りたい。
誰だって、大切な人が傷つけられたら、悲しい。
自分が傷つくより、よっぽど。
それは旅の仲間全員がわかっているはずのことだ。