ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(か、可愛いのが並んでるぅぅ……!)
仁菜は思わず、悶えそうになった。
だけどこらえた。
「俺は人間の王族だよ。
もうこれ以上、魔界には干渉しない。
約束するよ」
「ほんと……?」
「うん。だけどひとつだけ、お願いを聞いてくれないかな」
ラスの言葉に、きょとんと首をかしげる魔王。
そんな魔王に、ラスは微笑んで言った。
「風の樹の実はあきらめるけど、きみの従者が奪っていった、我が国の秘宝、『神の涙』。
あれを返してくれないかな?」
「そっか、そりゃあいい考えだ!」
颯が笑顔で両手をうった。
(神の涙……すっかり忘れてた)
その宝石に所持者と認められたものは、ひとつだけ願いを叶えてもらえるという伝説……。
(シリウスさんがいなくてやさぐれたときは、伝説なんか信じていられないとか言ってたのに)
まあ、それはいいとして。
(本当に『神の涙』が願いをかなえてくれる宝石なら、まだ望みはあるよね)
そんな仁菜の考えは甘かったらしい。
「あれは気まぐれな石だぜ。
誰を所持者に選ぶか、わからない」
カフカがにやりと笑う。
「もし邪悪な者が所持者と認められれば、それこそ世界の破滅に拍車をかけてしまいます」
シリウスがラスをさとそうとする。