ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「……だいじょうぶ……」
魔王のつぶやきが落ちる。
その小さな声に、全員が耳を傾けた。
「宝石が、あなたを所持者に選ぶって言ってるよ」
そのふわふわの手が指さしたのは……なんと、仁菜だった。
「あ、あたし?」
なんでこんな、なんの力もない非力な女子高生が選ばれるの?
疑問に思うけれど、仲間たちはホッとしたように笑う。
「おねえちゃんがこの石にお願いすれば、どんな砂漠だろうと、花は咲くと思う」
「ほんと?よかった……」
これで、ランドミルや砂漠の民たちを助けられる。
やっと、みんなの役に立てる。
「はい」
仁菜の差し出した両手に、魔王は着ぐるみのポケットからとりだした『神の涙』を渡した。
それは鼈甲のような黄金色をしている。
その中に、銀色の星々が輝いているように、仁菜には見えた。
「いいか、植物が根付いたら、二度とこっちがわにくるんじゃねえぞ。
約束を破ったときは、そのときこそ……」
「はいはい、皆殺しでしょ。
もう聞き飽きたって」
ラスの反論にかっとなるカフカ。
「お前なあ!王族ったって、なんの力もないんだろ?
これからますますいい気になるだろう人間たちを率いていけるのかよ?」