ヤンキー君と異世界に行く。【完】
カフカの言葉に、ラスは多少傷ついたようだった。
「それは……」
珍しく口ごもる。
ラスの功績や、シリウスが冤罪だということは、これで認められるかもしれない。
でも、やっぱり生まれは第7番目で、それも『女神』が母ときている。
「だいじょうぶ。
おにいちゃんは立派な、王様になるよ」
魔王がにこりと笑う。
(さっきもそうだけど、この子、未来が見えるのかな?)
その言葉は魔力を持っているようで、妙な説得力がある。
誰も彼を疑おうとしない。
「ほ、本当か?ラス様が王に?
そなたにはそれが見えるのかっ?」
一番に食いついたのは、本人ではなくシリウスだった。
その必死さに多少引きながら、魔王はうなずく。
「たぶん……全部未来がわかるわけじゃないけど、そのきれいな髪の上に、王冠が乗せられる瞬間は見えたよ」
魔王は両手をふりふりし、「きらきら~」とラスの金髪と将来の王冠の輝きを表現してみせる。
「なんと……!
おお魔王様、今までの非礼の数々、お許しいただきたい……!」
「ちょ、シリウス、恥ずかしいよ!やめてよ!」
シリウスはいつものクールなキャラを忘れ、魔王に向かって手をあわせた。
ラスは赤くなり、シリウスを止めようとしている。
「よっぽど嬉しいんだね……」
「そりゃあそうだろう。今までさんざん苦労したもんな。
あいつらもそろそろ、努力が報われても良いころなんじゃね?」
颯と仁菜は、顔を見合わせて笑った。