ヤンキー君と異世界に行く。【完】


自分より幸せそうな人を見ると、怖いくらいに焦ってしまう。


だから嫉妬して、あらを見つけて、あげ足をとって、あざけろうとしたことだってある。


うまくいかなければ、八つ当たりしたくなる。


母親を憎んで、いなくなってしまえばいいと思ったこともある。


かと思えば、急に死んでみたくなったりする。


自分でも情けなくなるくらい、自分は小さな人間で。


自分の未来さえ、一寸先も見えないけれど。


(お願いします。それでも、あたしは……)


まぶたの裏に浮かぶのは、この世界の人たちの顔。


最初はどうなることかと思ったけど、壊れてしまったこの世界にも、素敵なひとがたくさんいるのがわかった。


種族を超えて、一人の人を深く深く愛した人。


一度は絶望のふちにたたされたのに、新たな目標を持って、他人を救い続けている人。


憎まれても憎まれても、誇りを忘れず、輝き続ける人。


たった一人の人を守るために、自分の命さえ投げ出そうとした人。


彼らとの旅は本気でキツかったけど、大事なことを、たくさん教えてもらった。


魔族と呼ばれる過激な種族だって、誰かを守ろうとして戦っていることもわかった。


そして。


アホだ、バカだとののしってばかりだったけど。


そんな可愛くないはずの自分を、いつも真っ直ぐに見てくれた人がいる。




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