ヤンキー君と異世界に行く。【完】
なんでこんなアホが、あたしより幸せそうなんだろう?
仁菜はぼんやりと颯を見つめる。
彼とは小1からの付き合いだ。
同じ通学班だった。
他に1年生がいなくて、浮いていた仁菜の面倒をよく見てくれたのが、当時2年生だった颯だった。
当時から颯は、勉強はできなかった。
その代わり足は同じ学年の誰よりも速かった。
そして、一人遊びスキルの高い少年でもあった。
仁菜がぽつんと庭にいると、よく外に誘い出してくれて、ホウセンカの花をつぶした液で爪を赤く染めてくれたり、草笛の作り方を教えてくれたりした。
仁菜は颯を『颯兄ちゃん』と呼んでなついていた。
それは、仁菜が小6になるまで続いたが……颯が中学にあがってしばらくして、異変が起こる。
それは……。
なぜか颯が、突然ヤンキーになってしまったからだった。
それで、仁菜の心はいっきに颯から離れていった。
そして、今に至る。
この前偶然近所で会ったとき、バイクの音がうるさいって言ったのは覚えてる。
だけど、そこからどうして、コールをト○ロにするという考えに飛躍したんだろう?
ヤンキーの考えることはわからない。